御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
私の所に近づき「荷物をお預かりしてもよろしいでしょうか?」と彼は言いながら腰をかがめ、運転席の後ろへ手のひらを上にしたまま腕を伸ばした。

車の中を見ると玲音が座ってパソコン操作をしていた。
私に気が付いたのか玲音は目を向け、口を開いた。
おそらく「どうぞ」と言っているのだろう。

私は白髪の彼に荷物を渡し、玲音の隣に座った。

「遅かったですね。混んでいましたか?」

「すみません。先に出ているとは思わず」

「いいえ、何事もなかったのならいいです」

玲音はそう言うと仕事を再開し、それに合わせるようにトランクが閉められ、白髪の男性が運転席に座り、車を走らせ始めた。

考えてみれば彼の年齢、出身地、家庭環境を聞いていなかった。

でも運転手がいる車内では聞けない。

私は車窓から都会に続く道を眺めながらうとうとと船をこいでいた。
飛行機の中では色々な事が頭に浮かび結局眠れず終いだったのだ。

いつの間にか静かな町からビルの数が増え、建物の隙間も狭い地域を走っていた。

私はとりあえず信子に帰国したとメッセージを送り、お土産を渡す日を調整していた。

その間に車は高速を下り、暫く走ると住宅街に入っていた。

閑静な住宅街には大きな家からこじんまりした家まである。
同じ地域に住んでいても高層マンションのように格差というものがあるのだろう。
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