御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか？

車はコンクリート塀に囲まれた敷地の坂を上り、駐車場に止まった。

運転手は降りて後部座席の扉を開き、玲音が降りるのを待たずに前方を回って私の方の扉も開けてくれた。

明らかに他の家より広い敷地にある屋敷は横長のコンクリートでできていた。
シンプルながらも大きな窓が何個もあるとてもお洒落な建築だった。

お洒落な職場にも見えるし、住宅にも見える。

青々と茂る庭もあり、芝生も木も全てが手入れされている。

「こちらです」

玲音が私に声をかけ、大きな玄関に手を掛けた。
すると中から扉が開き、エプロンを付けた女性が出て来た。

「は、初めまして。神岡美音と申します」

私が深々とお辞儀をするとパタパタと奥から足音が聞こえてきた。

「あらあら、まぁまぁ。美音ちゃんいらっしゃい」

声はどう考えても玄関を開けてくれた人ではなく、パタパタとスリッパの音をならしてこちらに向かってくる人の方から聞こえてくる。

私がゆっくりと顔を上げるとそこには真っ赤なタイトなワンピースに身を包んだとても綺麗な女性が立っていた。

一目で玲音と同じ血が流れていると分かるほど綺麗な顔立ちだ。

「は、初めまして」

「そうよね。初めましてよね。うふふ」