御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
彼女はそう言って、家に上がるよう催促してきた。
私は靴を脱ぎ、靴を揃えると「偉いわね。やっぱり美紀の()ね」と彼女が言った。

美紀は母の名だ。何故この人が知っているのだろうか。

腰をフリフリして歩く彼女に連れられて軽く教室一つ分はある空間に足を踏み入れた。

広い空間には真ん中にローテーブルとそれを囲むようにソファーが置かれている。
壁には繊細なタッチで海外の田舎の風景が描かれた大きな絵が飾られ、花や観葉植物もあり、まさにお屋敷と言った感じだ。

窓からは庭が見えている。

彼女はソファーに座り、エプロン姿の女性が紅茶を運んできてくれた。

エプロン姿の人は玲音の母親ではなかったようだ。

私が彼女にお土産を渡すと玲音もコルマールで買っていたワインを渡していた。

「ありがとう。どうぞお座りになって。お父さんは仕事で来られないって言っていたわ」

「そう。じゃあ、紹介するよ。って言っても母さんは知ってるんだよね」

「母さん? お姉さんじゃなくお母さん?」

「あらあら。嬉しい事。玲音の姉に見えたのかしら」

さすがに近い年齢とは思わなかったが年の離れたお姉さんかと思っていた。
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