御曹司にビジネス婚を提案されたけどもしかしてこれは溺愛婚ですか?
「お世辞だろう。それより、電話でも話したけど、美音さんと結婚しようと思う」

「ええ。大歓迎よ。とても嬉しいわ」

何故私はこんなにも歓迎ムードなのだろうか。

普通こんな屋敷の母親ならドブネズミ! とまずは拒否するものじゃないのか? 
でもそれはドラマの演出にすぎないのだろうか。

「でも本当に驚いたわ。そうなればいいなとは思っていたけれど、まさか本当に恋に落ちるなんて」

「あの、どういう事でしょうか?」

私は話しの流れが掴みきれず、つい口を挟んでしまった。

だが、そんな私に玲音の母親は優しくこれまでの話をしてくれた。


始まりは祖父の時代だった。
玲音の祖父、喜一郎(きいちろう)がホテルを開業しようとした際にかつて地主だった私の祖父、勇《いさむ》が破格の値段で土地を譲った。

勇は喜一郎のビジネスへの考えに共感し、投資だと言って土地を譲ったそうだ。
喜一郎は勇の思った通り次々に事業を成功させ、大企業へと発展させた。

勇と喜一郎の娘が私の母である美紀と玲音の母である弘美(ひろみ)だった。

二人は幼い頃から一緒に遊び、姉妹のように育っていた。
だが、美紀が18になる頃、兄2人が起業した会社が次々に倒産し、多額の借金を背負うことになった。
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