強情♀と仮面♂の曖昧な関係
私、山形紅羽(やまがたくれは)は27歳の小児科医。
やっと研修医の肩書きがとれて、医師として歩き出したばかり。

今日は同じ大学の同期で、付属病院に就職したメンバーとの飲み会。
夏美は大学の同期で、私と同じ小児科医。
本当はお金持ち開業医の娘なのに、チョー現実主義者。
今だって、
「もったいないから、ほら飲みなさい」
良い所のお嬢さんとは思えない発言を繰り返す。

「ほんと、黙っていれば美人なのにね」
「紅羽、やかましい」
あら、聞こえてた。

「こら紅羽、飲み過ぎだぞ」
どこからともなく現れた翼が注意する。

「はいはい、分ってます」

福井翼(ふくいつばさ)は大学から同級生。
今は救命医として勤務している。
見た目は雑誌から飛び出てきたような、THE王子様。
顔が良くて、頭が良く、それで性格の良い奴ならモテないはずがない。
当然、学生時代からかわいそうなくらい目立っていた。

「飲み過ぎるな。介抱なんてごめんだからな」
耳元に口を寄せ、小声でささやく。

ッたく、不必要なまでにいい男。
ここまでくると、嫌みよね。

「分っているわよ。自分の足でちゃんと帰ります。ご心配なく」
フン。
本当は私の方がお酒強いのに。

「ごちそうさま」
私たちを恋人同士だと思っている夏美の呟き。
「はいはい、お粗末様」
フッ、笑ってしまった。
< 2 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop