強情♀と仮面♂の曖昧な関係
向かったのはいつもの大衆居酒屋。
炭水化物嫌いな私にとって、食べられるメニュ-の多い幸せな夕食。
その相手が気兼ねない翼なら文句なし。

さー、食べるぞ。
まずはビールで乾杯して、唐揚げ、サラダ、肉じゃがと、串揚げも。
結構高カロリーに頼んでしまいました。

「お前って、本当わかりやすいよな」
楽しそうな翼。
「何が?」
「食欲がストレスと比例してる」
はあ?

「イライラしてるときは高カロリーな物を欲しがるし、そうでないときは割とあっさりした物を注文する。誰が見てもわかるよ」
それは、えっと・・・単純だと言われているんですよね。

「悪かったわね」

良くも悪くも私の性格を知り尽くしいる翼に、今更何を隠すつもりもないけれど、この上から目線にはカチンとくる。
そりゃあ、翼は欠点のない完璧王子ですものね。

「で、お前はどうするの?」
「何よ、いきなり」
「3ヶ月の出張が終わったら、旦那に異動の辞令が出るぞ」
そりゃあ、そうよね。
それ前提での長期出張でしょうから。

「ついて行かないのか?」
「そんなの、行けるわけない」

翼だって分ってるはず。
私は今年やっと研修医が終わったばかりの半人前。
ついて行ったって邪魔になるだけ。

「別れる気か?」
「・・・しかたないじゃない」
このままいけば、いつかそんな結果を迎えるのは目に見えている。

「お前って、本当にめんどくせいな」
「は?」
「もう少し、器用に生きろ。適当に愛想笑いしてれば、もっと楽にいられるのに」
やめて、そのかわいそうだなって目。
「できないんだな。ごめんなさいね」
珍しい、今日の翼は絡み酒。

でもね、翼の言うことが正しいのはよくわかっている。
これからも社会人として生きていく上では身につけていかなくちゃいけないってことも。


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