強情♀と仮面♂の曖昧な関係
「すみません、福井翼の・・・友人です」
私は交番に駆け込んだ。

部屋の奥でパイプ椅子に座っている翼。
顔には擦り傷があり、唇の端から血がにじんでいる。

「あの・・喧嘩をしたって、本当ですか?」
どうしても信じられなくて、対応に出た警官に確認してしまった。

「ええ、きっかけは些細なことのようです。すれ違いざまに肩がぶつかったとかぶつからなかったとかの。ただ、3対1の派手な乱闘だったようで、近くの店から通報がありました」
はあぁ。
「ご迷惑をおかけしました」
友人として引き取りに来た以上頭を下げるしかない。

「いえ、相手は逃げてしまっていますし、こちらとしても大事にする気はないんですが・・・怪我をしておられるんじゃないかと心配でして」
「はあ」
「ご本人が、『自分は医者だ。怪我はないから大丈夫だ』と救急車の要請を拒否されたものですから・・・」

なるほど。
それで私が呼ばれたのね。

「大丈夫です。彼は救命医ですし、私も医者です。何かあれば責任持って受診させますから」
「そうですか」
警官はホッとした様子。

その後、私は身元引受人の手続きをした。
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