強情♀と仮面♂の曖昧な関係

部長の意地悪

12月。
毎年恒例、小児科の忘年会。
病院近くのイタリアンレストランで行われた。

「今年は随分おしゃれね」
隣の席に座った夏美につぶやいてしまった。

今まで参加した飲み会と言えば、居酒屋や中華、奮発してお寿司って言うのがほとんどだった。
こんな、イタリアンレストランを貸し切っての忘年会なんて始めて。

「部長のアイデアらしいわ。参加人数も40人を超えているし、若いスタッフも多いから、いいチョイスだと思うわよ」
「へー、部長がぁ」
確かに、おしゃれよね。

「山形先生、食べてますか?偏食かなんだか知らないけれど、しっかり食べて明日からも働いてくださいよ」
遠くの席から大きな声で話す部長。

フン、分ってます。

食欲不振は悪化の一途をたどり、最近ではめまいを起こすことのある私。
自分でもまずいなって思っている。

「先生どうぞ」
師長が赤ワインの入ったグラスを差し出した。

え?
思わず見つめると、
「部長が山形先生にって」
はあぁー、もう。

「先生、しっかり食べて飲んでください」
またまた部長の大きな声。
「はい。いただきます」
立ち上がって部長を見ると、嫌みたらしくお礼を言った。

クソッ。
小児科部長め。
私の事が気に入らないなら、かまわずに放っておいてくれればいいのに。

「紅羽、顔が怖い」
グラスのワインを流し込む私に夏美の突っ込み。

分ってます。
でも、笑って受け流せない私。
いつの間にか、アルコールの量だけが増えていく。

あちこちのテーブルで酔っ払いが大量発生しだしていた。

< 71 / 106 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop