強情♀と仮面♂の曖昧な関係
翌朝、渋滞を避けて早めに家を出た。
この体で長いドライブをすることに不安はあったけれど、行かなくてはいけない気がして車を走らせた。

以前来たときは綺麗な緑に覆われていたのに、今は枯れ葉が舞っている。
なんだか寂しいわね。
少し感傷的な気分になりながら、私は診療所への道を進んだ。

「こんにちは」
まだ診察前なのは分っていて、玄関から声をかける。

「はーい」
出てきた看護師の、どなたですかと怪しむような視線。

「私、山形と言います。公、いえ、宮城先生はいらっしゃいますか?」
「センセー」
看護師に呼ばれ、奧の診察室から出てきた公。

「え、お前」
驚いている。

「お知り合いですか?」
看護師に聞かれ、
「同僚です」
と答えた。

「じゃあ、ドクター?」
「ええ、まあ」

それ以上は何も聞かれなかった。

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