S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
ニセモノ夫婦へのステップ
バレンタインデーが過ぎた最初の金曜日。
お昼を目前にして、菜乃花は四月に入所する所員たちの研修資料をまとめたブルーファイルを大きなダンボールに詰め込んでいた。
今年は二十名が入所予定で初めて担当した昨年より五名多い。
「それ、どこに運ぶの?」
すべて詰め終え、ふぅと息をついていたら里恵が声を掛けてきた。
「ひとまずそこの書庫かな」
研修がはじまるまで一カ月半近くあるから、それまでは邪魔にならないよう片づけておきたい。
「台車持ってこようか」
「ありがとう」
里恵は素早く席を立って台車を引いてきた。
「ところで今日は誰かとデート?」
「え?」
「いつもより洋服に気合が入ってるよね」
「そ、そうかな」