S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
両親を亡くしている菜乃花を娘として扱ってくれているのがありがたく、なによりうれしい。
「これまでずっと妹みたいなものだったんだけど、気づいたら菜乃をそう見られなくなってた」
隣の朋久に目を向けたら、嘘には見えない真剣な横顔だった。本気なのではないかと期待するほどの名演技だ。
偽装だと悟られないための嘘だとわかっていても鼓動がスピードを増していく。
「お互いに気持ちを確かめ合って結婚に行き着いたんだ。な? 菜乃」
突然話を振られてビクンと肩が揺れる。朋久をじっと凝視していたため不意に目が合い、その眼差しの優しさに今度は心臓が跳ねた。
「う、うん。そうなの、おじさま、おばさま」
彼に頷いてから浩平と寿々に顔を向ける。今度は菜乃花が演じる番だ。
「朋くんをずっと好きだったの。だから……」