S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

つい本心が口をつき、意図せず感極まる。胸がいっぱいで演技どころでなくなった。
膝の上で手をぎゅっと握っていた手を朋久がそっと握る。優しく微笑まれた。

(そんな顔するなんて反則だよ……)

ドキドキが止まらない。


「だから父さん、母さん、俺たち結婚するよ」
「そうかそうか。これはまいったな。ふたりがそんな関係になっていたなんて」
「勝手なことをしてごめんなさい」


ふたりを困らせてしまったのではないかと菜乃花が慌てて謝る。


「謝らなくてもいいのよ。私たちはうれしいんだから。ねえ、あなた」
「ああそうだとも。なっちゃんが本当の娘になるんだからね」


手放しで喜んでくれているふたりを前にして、今さらながら罪の意識が芽生えた。歓迎してもらっているからこそ嘘が申し訳ない。


「天国のふたりも喜んでいるだろうよ」
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