S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「俺が貶められてるのは気のせいか?」


朋久が不服そうに口を挟む。


「あらっ、そうだったかしら」
「気のせいだろう。ハハッ」


笑いが巻き起こり、京極家のリビングが賑やかな空気に包まれる。幸せなひとときに菜乃花も束の間、偽装結婚であるのを忘れてしまうほど。


「それで挙式はどうするんだね?」
「とりあえず入籍だけ先に済ませて、落ち着いてからでもいいかと考えてる」
「まぁ今どきは式を挙げないカップルも多いとは聞くが、やはりひとつの儀式だし、私はしっかり結婚式は執り行ったほうがいいぞ」
「なっちゃんだってウエディングドレス、着たいでしょう?」


寿々に問いかけられ、言葉に詰まる。

もちろん着たい。大好きな人の隣で憧れのウエディングドレスを着られたらいいなとは思う。朋久のお嫁さんがずっと夢だったから。でも……。

朋久をチラッと盗み見て助けを求める。多くの人から祝福を受ける場は、偽装結婚するふたりには不釣り合いだろう。参列する人たちにも失礼だ。
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