S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
子ども扱いはそろそろやめてほしい。菜乃花はもう二十四歳、立派な大人だ。
「なにか買って帰ろうか」
そういう優しさが菜乃花の心をいつまでも掴んで離さない。
しかし、うれしさを隠して悪態をつく。
「ついさっき『太るぞ』って言ったのに?」
「スイーツとは言ってない」
「なにもいらないよ、ありがと。雅史さん、お先に失礼します」
頭を下げる菜乃花に雅史が軽く手をあげる。
「菜乃花ちゃん、またね」
朋久に「ご馳走様でした」とひと言添え、ミレーヌを出た。
母親を追うようにして父親が病気で亡くなり、両親がいなくなった一軒家にひとりで暮らしていくしかないと覚悟を決めた矢先、朋久から『心配だから俺のマンションに来い』と予期せぬ提案をされ、菜乃花は彼と同居をしている。