S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

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その週末、菜乃花は空が白みはじめるよりずっと早く目覚めていた。それよりはむしろ、ほとんど眠れなかったといったほうが正しいかもしれない。

昨夜はクローゼットから引っ張り出した洋服をベッドに広げ、遅い時間まで鏡の前でいろいろな組み合せを試して悩みに悩んでいた。

今日は、いよいよ朋久とデートへ行く日である。

洋服同様に迷っていた行き先は遊園地に決定。中学生のとき、当時大学生だった朋久が彼女と行った話を彼の父親から聞き、いつか一緒に行けたらいいなぁと憧れていた場所だ。

その提案をするまではもっと大人っぽいデートをしたいと考えていたものの、憧れていた場所が頭から離れなかった。

どちらかといえばアクティブなデートスポット。本当は普段よりもうんとしっとりとした服装で朋久を驚かせたかったが、ヒールは不向きだと諦めた。

それでも自分の中で一番かわいいスタイルにしようと悩みぬいた末に決めたのは、真っ白なモヘアのニットワンピース。赤をベースにしたチェックのマフラーを首に巻き、黒いレギンスに黒いスニーカーを合わせた。
髪はアップにして高い位置でまとめ、メイクも念入り。少しでもかわいいと思ってもらえるよう精いっぱいコーディネートした。
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