S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
*****
菜乃花を見送った朋久は、ミレーヌからほど近い外資系高級ホテルにあるラウンジへ雅史とふたりでやって来た。彼とは一カ月に一度のペースでこうして会い、お互いの近況を報告し合っている。
土曜日の夜のせいかカップルが多くを占めるラウンジからは、灯りはじめた街の光が一望でき爽快だ。今度、菜乃も連れて来てやるかとぼんやり考えながらカウンターに並んで腰を落ち着けた。
それほど待たずに出されたギムレットハイボールのグラスを傾け、ひとまず乾杯。爽やかなフレーバーが口に広がる。
「菜乃花ちゃん、急に大人っぽくなったな」
「そうか?」
雅史が菜乃花に会うのは数カ月ぶりだが、同居している朋久は特に変化を感じられない。さすがに背は高くならないから髪が伸びたとか、そのくらいだろうか。
「一緒に暮らしててなにも感じないのか」
「なにもとは?」
質問の意図がわからず聞き返す。