S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

朋久のほうに身を乗り出したら「こっちにおいで」と彼に手を引かれた。
ドキッとしつつ彼の隣に移動する。瞬間、箱が大きく揺れたため、朋久に体が軽くぶつかる。


「ごめ……」


謝って隣を向いたら間近に朋久の顔があり、菜乃花に緊張が走る。
すぐに目を逸らせばいいのに、彼の視線に捕えられてできない。それがいつもとは違う熱っぽさを感じたせいだ。


「観覧車の定番といったら?」


その状態のまま、囁き声でいきなり質問された。
菜乃花の頭の中に浮かんだのは、ただひとつ。それ以外に今はない。


「……キス?」


声がかすれて今にも消え入りそうになる。


「正解」


朋久の吐息を感じた刹那、唇が重なった。
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