S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
(なんで菜乃にドキドキしてるんだよ)
自分で自分の反応に狼狽えた。
「前に会ったときより綺麗になったよ。まぁ菜乃花ちゃんは地が美人だけど。あの様子だと回りが放っておかないんじゃないか?」
「いや、どうだろう」
「どうだろうって。七年近くも一緒に暮らしてきたのに、どこを見てきたんだか」
雅史は呆れ返りながら髪をかき上げた。
父親同士が友達で自宅も近所だったため、菜乃花が産まれたときから知っている。八歳だった朋久は、綺麗な顔立ちをした赤ちゃんだなと子どもながらに感じたものだ。
そしてその印象は、彼女が幼稚園、小学校、中学校と進んでも変わらず、近所でも評判の美少女だった。ぱっちりとした大きな二重瞼に小さな小鼻。上品な唇にふっくらとした頬は今も変わらない。
京極総合法律事務所に彼女が入所したときには、正統派の美人アナウンサーみたいだと噂になったくらいだ。
だが、朋久にとって菜乃花は妹のようなもの。女性として見るなんて考えたことがない。