S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
いたずらっぽく笑った朋久に体を反転させられ、菜乃花はバスルームに向かった。
パウダールームには彼が言っていたように下着や洋服はもちろん、コスメの類も用意されていた。それも菜乃花が普段使っている基礎化粧品のブランドだ。
(朋くん、よくわかったなぁ。なにも気にしていないようでいて、意外と神経が細やかなんだよね)
一緒に暮らしているし、自宅マンションのパウダールームの棚には菜乃花の化粧品を置いているが、そこまで気を回せる男性は少ないだろう。
(それにしてもホテルってなんでも用意できちゃうんだな)
感心しながら体に巻きつけていた毛布を外し、丁寧に畳んでそばの椅子に置く。
ベージュで統一された優しげな雰囲気のパウダールームと同様、バスルームも落ち着いたトーンだが、とにかく広い。
朋久のマンションのバスルームもゴージャスな仕様で、同居当初はソワソワしてゆっくりできなかったことを思い出す。
当時のようにシャワーを急いで浴び、朋久が準備してくれたであろうバスタブのお湯に束の間体を沈め、支度を済ませて彼の元に戻った。
朋久はコーヒーメーカーのサーバーからカップにコーヒーを注いでいるところだった。