S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
ボーイよろしく椅子を引き、菜乃花を座らせた。
「ひとつだけ言っておくけど、俺は菜乃花が想像するほど恋愛の場数は踏んでないぞ」
テーブルに手を突き、菜乃花の顔を覗き込む。
「そうなの? モテモテなのに?」
「仕事が忙しかったし、菜乃花と暮らすようになってからはまったくない」
女性の影がないのは知っていたが、菜乃花に気づかれないようにしているのだと思っていた。
「じゃあ昨夜は……久しぶり?」
「かなりね。だから菜乃花は、責任を持って今夜から俺の相手をするように」
毎晩とでも言いたげな様子に鼓動が跳ねる。
でも朋久が求めてくれるのなら応えたい。
「……がんばります」
ボソボソと意気込みを口にしたら朋久は目を丸くした。