S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
悲しき出生の秘密
四月に入り、京極総合法律事務所に新人たちが入所してきた。
現在は研修中だが、あちこちでそのフレッシュな姿を見かけるたびに、朋久は当時の自分を思い出し〝がんばらねば〟と身が引きしまる。
つき先ほどもクライアントに会うためにパラリーガルの野々原と応接室へ入る手前で、元気よく挨拶されて新鮮な気持ちになった。
今回の相談は、倒産した企業の持っていた知的財産権に関して。中古家電の通販をはじめるにあたり、カタログを集客用のコンテンツとして公開可能かどうかの相談だ。
「現存するメーカーさんに対してはデータの利用に関して了承を得ることは可能なんですが、倒産したメーカーさんの場合はどのようにしたらいいのでしょうか」
三十代後半のクライアントがソファの向かいで神妙な面持ちになる。
「発行していた著作物、たとえばカタログの著作権が誰に帰属していたのかが問題ですね。廃業したメーカー自体が制作したものであれば、そのメーカーが著作権を保有していたものと思われます」
「もしもメーカーが制作したものだった場合は?」
「著作権法62条により著作権者である法人が解散し、その法人を承継する者がいない場合、著作権は消滅します」