S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「まぁ京極先生の人気は凄まじいですから、女性たちの反応を考えると結婚まで黙っているのが正解でしょうけど」
まさかそのときには付き合ってもいなかったとは言えない。
「でも若槻さんが妻なんて先生が羨ましいです」
「だろう」
「あぁいいなぁ。幸せが体から溢れてますよ。仕事もますます精力的ですし」
菜乃花と想いを伝え合ってから三週間が経過し、人はこれほど幸せを感じるものなのかと驚くほど充足した日を送っている。
ここ七年の間、彼女とは毎日一緒に過ごしていたはずなのに、もっとそばにいたいがために飛んで帰る毎日。毎晩のように菜乃花を求め、呆れるくらいに抱き合い、何度も何度も愛の言葉を交わし合う。
どれだけ彼女と繋がっても、それで十分とはならない。自分がここまで貪欲な男だとは知らなかった。――菜乃花限定ではあるが。
「さて、この後は神戸に飛ばなければなりませんね」
「そうだな。三十分後にエントランスに集合しよう」
腕時計で時間を確認して野々原に指示する。