S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
小さく悲鳴を上げた彼女をすぐ近くの自分の部屋に引き入れる。ドアをすぐさま閉め、ふたりだけの空間を作り上げた。
「京極先生、今は仕事中です」
表情をきりっと引きしめ、朋久を見上げる。
こうされてもなお、その姿勢を崩さないとは大したものだ。
「そう堅いことを言うな。せっかく仕事中に菜乃に会えたんだ。少しくらいはいいだろう? どうしてこのフロアに?」
「武田先生に新入所員たちが記入した研修日誌をお持ちしたんです」
菜乃花が抱えていたクリアファイルの束を朋久に示す。
「未だに手書きなんだな。プラットフォームを整備してDXの推進をしていったほうがいいんじゃないか?」
「それなら間もなく整備が完了する予定です。入所したときからぜひ進めたいと考えていたことなので。人事課で管轄している労務関連の届出なんかも効率化が図れるかと思います」
「へぇ、菜乃花が推し進めたのか」
「提案したのは私ですけど、プラットフォームを作ったのはIT会社の方ですから」