S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

菜乃花は謙遜するが、そういったアイデアはなかなか出せるものではない。入所三年目になり、近頃は自信もついてきたみたいだ。
自分の妻ながら誇らしくなり、腕を掴んで引き寄せ、軽く触れるだけのキスをした。


「と、朋くんっ、ダメだってば……!」


不意を突いたため、それまで堅い態度を貫いていた菜乃花がプライベートモードになる。驚いた顔がほんのり赤く染まり、かわいらしさに拍車がかかった。

いっそ唇を割ってソファに押し倒してしまいたいが、そんなことをして菜乃花に嫌われたくはない。


「これから大事な契約があるから、うまくいくためのおまじないだ。許せ」


キスを正当化するための理由を並べた。


「今日だけだからね」


ちょっと怒ったような表情に妙に色気がある。
はじめて女の悦びを知ってからの菜乃花は、急速に色香が増している。ときに幼さが混在するときもあり、それがかえって朋久の心をかき乱すから堪らない。
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