S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

部屋のドアがノックされたのは、菜乃花が今まさにドアノブに手を掛けようとしたときだった。


「はい」


朋久の返事に秘書がドア越しに名乗る。
菜乃花が突然、女豹のようにしなやかな動きで執務机の向こうに身を隠した直後、秘書が入室した。


「失礼します。……いかがされましたか?」


突然のかくれんぼがおかしくて笑いを堪えたら、秘書が怪訝そうに朋久の様子を伺う。


「あ、いや」


急いで表情を引きしめ、通常モードにシフトチェンジ。朋久はなにごともなかったように取り繕った。


「この後は『東日本キャピタルソリューション』様の株式譲渡契約がございますが、そろそろお車の準備をしてもよろしいでしょうか」
「そうだね。そろそろ下に向かおうと考えていたからそうしてもらえると助かるよ」
「承知いたしました」
< 204 / 300 >

この作品をシェア

pagetop