S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
城下基樹は菜乃花の同期であり、里恵の彼氏である。
積極的な里恵からの猛アプローチが功を奏し、入所後半年で恋人同士になった。現在、司法試験合格を目指してパラリーガルとしてがんばっている。
イケメン好きを豪語する彼女がひと目惚れするくらい容姿に優れているが、彼女が彼を自慢するたびに、菜乃花は〝朋くんのほうが素敵だけどね〟と心の中でこっそり呟いている。
もちろん里恵には絶対に内緒だ。
「いいね。それでいつ?」
「今週末とか。みんなの都合も聞いてからだけど。菜乃花はどう?」
「私は大丈夫だよ」
「よし、菜乃花はゲット、と。ほかのみんなにもあとで聞いてみるね」
里恵はうれしそうにパソコン画面に視線を戻した。
いつものメンバーとは同期の仲間六人を指す。男女三人ずつの仲良しだ。
そのうちの菜乃花と里恵を覗いた四人は、揃って弁護士を目指している。
菜乃花はもともと京極総合法律事務所に入所予定ではなかった。生活の面倒をみてくれている朋久に仕事まで頼るわけにはいかないと、当初は一般企業への就職を目指し内定をもらっていた。
ところが入所を目前に控えた三月初旬、その会社で不祥事が発覚し株価が急落。新入社員を受け入れる余裕がなくなった旨の通達を突然受けた。