S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

朋久には『うちの事務所で働けばいい』と言われたが、そうはいかない意地もあり就活に奔走。しかし入社の差し迫った時期に拾ってくれる企業はなかなかない。

それを知った朋久の父・京極浩平(こうへい)に『なっちゃんがうちで働いてくれると、おじさんもうれしいなぁ』と再三にわたって請われ今に至る。

幼い頃から行き来のあった京極家。父を亡くしたときには『私を父親だと思って頼りなさい』とありがたい言葉ももらい、彼に父親の面影を感じている部分もあるため入所へ心が傾いた。就活が惨敗続きで疲弊していたのも大きい。

朋久には『俺が何度言っても首を縦に振らなかったのに』と不満そうに言われたが。

それでもなんの試験も受けずに入所するわけにはいかないと、みんな同様に試験を受けさせてもらった。筆記試験はもちろん一次面接、二次面接と受け、最後のCEO――浩平の面接までしっかりと。

そうして合格をもらえた菜乃花だったが、頭の中には〝コネ〟がちらつき、最初のうちは引け目を感じていた。しかし里恵をはじめとした同期に出会えた今となっては、ここに入所する決断をして本当によかったと思う。


「若槻さん、これを武本(たけもと)先生の部屋に届けてもらえないですか?」
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