S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
絞り出した声のか細さに自分で驚く。内側から全身が打ち震え、血の流れさえ止まったように感じる。
彼女がいなければ、自分はこんなにも軟弱なのか。
ふらつく足で立ち上がり、菜乃花のいない現実から目を背けようとワインセラーからボトルを取り出す。コルクを抜き、グラスになみなみと注いだワインを立ったまま一気に飲み干した。
空になったグラスにすぐさま注ぎ足し、それも喉に流し込む。カーッと熱くなる体に反して、心はどんどん冷えていく気がした。