S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
ネットカフェで一時間ほど過ごした菜乃花は、再び実家に戻ってきた。
途中コンビニに寄っておにぎりやサンドイッチを買い込んできたが、食欲はまるでない。ダイニングテーブルであたたかいお茶のペットボトルに口をつけたときだった。
玄関から物音が聞こえると同時に「菜乃!」と呼ぶ、朋久の声が響いた。
(えっ、朋くん……?)
驚いてペットボトルをテーブルに置き、ガタンと椅子を鳴らして立ち上がる。
バタバタと足音を響かせて朋久が現れた。
「やっぱりここにいたか」
「あのっ、どうして」
思わず一歩後ずさる。
「俺は離婚しない」
「でも私はほかに好きな――」
「これだろう? 菜乃が離婚しようと考えた原因は」
朋久が手にしていたものにハッとする。
「それっ……!」