S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
あのとき、胸の奥でたしかに感じた想いが蘇る。追体験のような夢のおかげで、菜乃花との大事な約束を思い出せた。
「菜乃、俺と結婚してくれ」
気づいたらそう口走っていた。
「やだ、朋くん、私たちもう結婚してるでしょう?」
頬を少し染めてはにかむ菜乃花が、当時の彼女と重なる。時を経て可憐な大人の女性へと変貌を遂げた菜乃花は、間違いなく世界一美しい。
「そうだな。でも改めて言わせてほしい」
「……うん、わかった」
真剣な朋久に感化されたのか、菜乃花は背筋を伸ばして次の言葉を待った。
「菜乃、愛してる。俺と結婚してほしい」
「はい、喜んで」
答えた次の瞬間、菜乃花が朋久に抱きついてくる。それをしっかりと抱きとめ、腕に閉じ込めた。
(絶対にどこにもやらない。俺だけのものだ)