S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

あのとき、胸の奥でたしかに感じた想いが蘇る。追体験のような夢のおかげで、菜乃花との大事な約束を思い出せた。


「菜乃、俺と結婚してくれ」


気づいたらそう口走っていた。


「やだ、朋くん、私たちもう結婚してるでしょう?」


頬を少し染めてはにかむ菜乃花が、当時の彼女と重なる。時を経て可憐な大人の女性へと変貌を遂げた菜乃花は、間違いなく世界一美しい。


「そうだな。でも改めて言わせてほしい」
「……うん、わかった」


真剣な朋久に感化されたのか、菜乃花は背筋を伸ばして次の言葉を待った。


「菜乃、愛してる。俺と結婚してほしい」
「はい、喜んで」


答えた次の瞬間、菜乃花が朋久に抱きついてくる。それをしっかりと抱きとめ、腕に閉じ込めた。

(絶対にどこにもやらない。俺だけのものだ)
< 290 / 300 >

この作品をシェア

pagetop