S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「朋くん、私も愛してる。世界で一番――ううん、朋くんだけ愛してる」
「俺も菜乃だけだ」


引きはがした菜乃花の瞳に光るものが滲む。
そっと目を閉じた彼女の唇を優しく塞いだ。

こんなにも大切な人に出会えた神業に、相思相愛の奇跡に感謝したい。全身全霊をかけて、彼女を愛しぬくと誓う。

重ねるだけのキスを解き、菜乃花と見つめ合っていたそのとき。控室のドアが開き、賑やかな足音が近づいてきた。


「まぁ、なっちゃん、とっても綺麗!」
「どこの女神様かと思ったよ、なっちゃん」


朋久の両親が、菜乃花と朋久を挟むようにした。
いつの間に退室したのか、女性スタッフは姿を消している。熱烈なムードのふたりの邪魔はできないと気を利かせてくれたのかもしれない。


「おじさま、おばさま、ありがとう」
「あらあら、なっちゃん、朋久に泣かされたの?」
「なに、朋久が泣かしただと?」
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