S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

目尻に滲んだ涙に気づいた寿々は取り出したハンカチで菜乃花の目元を拭い、浩平は語気を荒げて朋久を問い詰める。

(ふたりとも菜乃を大好きなのはわかるが、息子をもう少し信頼してくれてもいいんじゃないか?)

せっかく幸せな気分でいたというのに台無しだ。


「ううん、泣いてないから心配しないで」
「なんで俺が菜乃を泣かせるんだよ」


菜乃花が笑みを浮かべながら首を横に振って否定するが、朋久だって黙ってはいられない。
朋久が菜乃花を泣かせるわけがないのだから。


「だって、涙を浮かべてるんだもの」
「おばさま、これは違うの。ちょっと感動しちゃって」
「感動? そうなの?」


寿々がたしかめるように朋久を見たため、頷いて返す。


「もしかして、ふたりの邪魔をしちゃったかしら?」
「まぁね」


それはもう多大なる妨害だ。
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