S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「なにを言うんだ、朋久。なっちゃんはお前だけのものじゃないんだぞ? ひとり占めはダメだ」
「もう、あなたったら大人げないわよ」
さすがの寿々も呆れたように浩平の腕を揺すって窘める。
(でもまぁ、両親を亡くした菜乃花を本当の娘のようにかわいがっているのだから、多少は大目に見てもいいかもしれないな)
朋久は菜乃花と顔を見合わせて笑い合った。
「おじさま、これからはお義父様って呼んでもいい?」
「お、お義父様!?」
菜乃花の不意なお願いに浩平がこれ以上ないほど目を丸くする。
「おばさまはお義母様で。……ダメ、かな」
「大歓迎に決まってるじゃないか。なぁ、寿々」
「ええ、もちろんよ。これからもよろしくね、なっちゃん」
大喜びの浩平と寿々に菜乃花が笑顔を向ける。
キラキラと輝くその横顔が、朋久の胸を幸せで満たしていく。
その笑顔を守るのが朋久の使命であり、願いでもある。
彼女の手を取って指を絡ませ、何度口にしても足りない〝愛してる〟を交差する視線に乗せて伝えた。
本編END