S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
番外編~仕事中のキスは厳禁です
結婚式から三カ月が経った、冬のある日の京極総合法律事務所。
菜乃花はかっちりとしたスーツに身を包み、朋久のデスクのそばでスケジュールの確認をしていた。
「本日の予定は以上になります」
努めて真面目に業務を遂行すべく、真顔を朋久に向ける。
「やっぱり菜乃が秘書っていいな」
「先生、ここでは若槻とお呼びください」
ニコニコと屈託のない笑みを浮かべる彼に毅然と返した。
「ふたりきりなんだからいいじゃないか」
「そうは参りません。仕事中ですから」
「まぁそう言うな。ときには癒しも必要だ」
ファイルを抱えた菜乃花の手を取り、指を絡める。仕事中とは思えない甘い眼差しを菜乃花に向けた。
菜乃花がここに秘書としているのは、秘書室に所属する者たちがことごとくインフルエンザに倒れ、秘書業務を遂行できなくなってしまったためである。