S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
可能な限り通常業務を圧縮して代表弁護士たちのサポートにあたるようにと、総務部に白羽の矢が立った。
同期の里恵も駆り出され、それぞれ複数名の弁護士のサポートにあたっている。
本来であれば妻が秘書代行を務めるのは避けるべきだろうが、朋久は菜乃花以外の秘書なら必要ないとわがままを言い、それを押し通した。
以前、朋久に『菜乃を俺の秘書に任命しようか』と言われたときにはドキドキして心臓が持たないと思ったものだが、じつは密かにうれしい。慣れない仕事ではあるが、菜乃花自身も朋久の働く姿を間近で見られるのはそうそうなく、貴重な体験だから。
昨日は大企業のクライアントが訪れ、その社長にも引けを取らない、いやそれ以上に精彩を放つ朋久の立派な仕事ぶりに胸を高鳴らせた。
「次の約束まで時間があるから、今週末の過ごし方について少し話そうか」
デスクに両肘を突き、朋久がいたずらっぽい表情を浮かべる。
「それは帰ってからにしませんか?」
あくまでも真面目な姿勢を崩さない菜乃花の手を取り、朋久はソファに腰を下ろした。それも、菜乃花を膝に乗せる格好で。