S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

突飛な要求にもほどがある。会社でキスなんてとんでもない。


「それはダメ」
「じゃあ、もう少しこのままだな」


朋久がニヤッと笑って続ける。


「なんなら、次の来客までいいかも」


次の来客といったら一時間後。そんなに長い時間このままのわけにはいかない。
菜乃花は朋久以外にも三名の弁護士を受け持っているため、ここに一時間も居続けるのは無理なのだ。

それを回避するには、彼の条件を飲む以外にないか……。

大真面目に悩んでいるというのに、朋久は楽しげな顔をして菜乃花を見つめていた。

(もうっ、朋くんってば……!)

唇を引き結んで睨んだが、彼に「そんな顔をしても菜乃はかわいいな」とからかわれた。


「……一回だけだからね?」


条件を飲む覚悟を決める。
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