S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「ああ、一回だけ」
してやったりといった表情で微笑んだ朋久の唇に、自分のそれを重ねた。
軽く触れるだけで離れようとしたが、朋久は逃がすまいと菜乃花の背中を強く抱き寄せる。
「――んっ」
驚いた弾みで唇から力が抜けた隙に彼の舌が侵入を果たした。
それまで毅然とした態度を貫いていたのに、朋久の巧みな舌づかいが菜乃花の強い意思を揺さぶりにかかる。弱点を知り尽くした彼のキスは、菜乃花を恍惚とした世界へ誘い、唇から甘い吐息を零れさせた。
どれくらいの時間が経ったのかわからないほどのめり込み、唇が解放されたときには体の中心が熱くて堪らなくなっていた。
「……一回って言ったのに」
「約束を破ったつもりはない。唇を離すまでが一回なら、今のもそうだろう?」
菜乃花の恨み言にも朋久は屈しない。独自の理論で畳みかけた。