S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「給料は支払ってもらえるはずですよ」


女性ふたりの会話がぴたりと止む。驚いた様子で朋久に目を向けたふたりは、しばし言葉を失くした。
おそらく朋久の容姿端麗ぶりに声も出せなくなったのだろう。その証拠にどちらも顔が微かに赤い。


「倒産、破産、民事再生、どれであっても従業員に対する給料はほかの債権者より優先的に支払われるよう法律で定められています」
「えっ、そうなんですか?」


ようやく正気を取り戻した女性が、朋久に体を向ける。


「財団債権に分類されるものと優先的破産債権に分類されるものとで多少の違いはありますが」


朋久の説明を食い入るように聞き入りはじめた。


「会社に支払い能力がない場合はどうなるんですか?」
「社内にほとんど資産が残っていないケースは多々ありますね。ただ、その場合は国が運営する未払賃金立替制度を利用すれば、給料の一部の支払いを受けられます」
「その制度はどうやったら使えるんですか?」
「運営しているのは労働者健康安全機構ですので……」
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