S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

朋久は、次から次へ質問を重ねる彼女に丁寧に答えていく。先ほどまで菜乃花をからかって楽しんでいたのとは大違い。きりっと引きしまった真摯な表情に胸が高鳴る。

最後には「なにか困ったことがあれば、こちらにご連絡ください」と自らの名刺を差し出した。


「弁護士さんだったんですか。だから詳しかったんですね」


休日のためスーツを着ておらず、輝く金バッジは着けていないが。


「ご連絡いただければ、労務専門のスペシャリストをご紹介しますよ」


女性ふたりは感心したように名刺を見ては何度も「ありがとうございます」と言って、ケーキ皿を空にして店を出ていった。


「〝弁護は所詮他人事だ〟ってよく言ってるのに、朋くんって優しいよね」


カフェにたまたま居合わせた見ず知らずの人に助け船を出してあげるのだから。
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