S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「断った」
「え……、断った、の?」
菜乃花がここを出ていく課題はまだ決着がついたわけではないが、朋久の言葉に安堵する。
「好きな女性がいるって嘘で切り抜けた。結婚も考えてるって」
「……嘘で?」
朋久に好きな女性がいなくてホッとする反面、自分もまったく眼中にないのだと軽く打ちのめされる。わかっていたくせに恋心とは厄介だ。
「だから菜乃にはここから出ていかれたら困る」
「意味がわからないんだけど」
朋久の嘘と菜乃花の同居が繋がらない。
「教授に今度その女性を紹介することになってるから、俺の婚約者として菜乃に会ってもらおうと考えてる」
「ちょっ、えぇっ!? 私が朋くんの婚約者!?」
素っ頓狂な声が出た。
「結婚間近の。もちろん偽装だから心配するな」