S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
次々と畳み掛けられて頭がついていけない。予想外の展開に驚きを隠せず、激しく瞬きを繰り返して口までパクパク。間抜けな顔になっているのはわかったが、どうにも制御ができない。
彼が自分を好きなわけではないのに、菜乃花にとって最高の栄誉である朋久の婚約者のポジションが目の前にいきなり差し出された。輝かしいばかりの称号に目が眩んで天秤が大きく傾く。
彼が望むなら偽りでもいい。
そこまで朋久が好きなのだと改めて自分の気持ちを知った。
「だから菜乃にはここにいてもらいたい」
それが自らの嘘を真実にするためだとわかっている。でも……。
切実な目をした朋久への菜乃花の答えはひとつ。
「……わかった」
「物わかりがいいな」
ふんっといった具合に鼻を鳴らす。
「なんかエラそうなんですけど」
「冗談だ。サンキュ」