S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
照れ隠しに不満を口にした直後にポンと頭を撫でられ、同時に鼓動もポンと弾む。
「け、けど弁護士なのに嘘なんてついていいの?」
弁護士だから私生活でも嘘をついたらいけないとは言わないが、偽りのポジションにたやすく喜ぶ自分を隠したくて、つい悪態をつく。
「やむを得ない。お世話になった恩師の手前、それしか手立てがなかったんだ」
「美人さんなのにもったいなくない?」
答えにヒヤヒヤするくせに、朋久の反応をたしかめたいがために余計な質問をした。〝本当に美人だよな〟と言われたら嫌なくせに。
あまのじゃくな自分の一面に、もうひとりの菜乃花が〝そんなこと聞かなくていいのに!〟とツッコミを入れる。
「そうか? 菜乃のほうがおもしろい」
そう言いつつ、朋久は菜乃花の頬を摘まんで引っ張った。
「おも、おも……もうっ、朋くん、ひどいっ。女の子におもしろいなんて言うものじゃないよ?」