S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「たまには一緒に作るか」


ネイビーのエプロンをつけた朋久が、ワイシャツの袖を捲り上げる。

大学生の頃から菜乃花が同居するまでの間ひとり暮らしをしていた彼は、じつは家事もお手の物。掃除は週に三回ほどハウスクリーニングをお願いしていたが、料理は結構な腕前だ。


「手早く作れるものがいいよな」
「ご飯は炊いてあるから丼ものにする? たしか鶏肉があったから親子丼とか」
「いいな。それにしよう」


朋久の賛同を得て、材料を冷蔵庫から取り出す。華麗な包丁さばきで肉や野菜を刻む彼を横目にしつつ、菜乃花は鍋の準備をした。

ぐつぐつ煮込みながら味見をして、「おいしい?」「かなりイケてる」というやり取りをするのがすごく楽しい。
ふたりでキッチンに立つのはいつくらいぶりか。そのときよりも距離が近く感じてドキドキが止まらない。

平気なふりをして隣に立ちながら、朋久の笑顔や一挙手一投足に、菜乃花はひとりどぎまぎしていた。

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