S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う
「だって本命と同じものじゃおかしいでしょ? 菜乃花は今年も本命チョコをあげる相手、いないの?」
そう聞かれてパッと朋久の顔が浮かぶ。
「い、いないのは里恵が一番よく知ってるでしょう?」
仲良くしている彼女にも秘めた恋心は内緒。絶対的に叶わない恋だと憐れんでほしくなかった。
「菜乃花の本命チョコを待ってる男の人は社内中にいっぱいいるのに」
「そんなわけないでしょう?」
冗談めかして食事に誘われたことならあるが、言い寄られた経験は一度もない。
「京極先生が菜乃花の背後で鋭く目を光らせてるから、みんな簡単にアプローチできないんだよ。一般的な父親より怖い保護者だもん」
「なにそれ」
クスクス笑う。
「だって下手に手出しして、うっかり法で裁かれたりしたら大変でしょう?」
「どんな手を使うつもりなのー?」