S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「よかったぁ。こんなの甘くて食べられるかって言われたらどうしようかと不安だったの」


うれしいし、ホッとひと安心だ。


「菜乃の作ったものを突き返すわけがないだろ」
「えー? 朋くんなら遠慮なくそうしそうだけど」
「俺はずいぶんと性格が悪いようだな」
「悪くないよ。ただちょっとSっ気があるだけ」


ちょっとかどうかは微妙だ。ときにグサッと突き刺さるひと言がある。
まぁたいていはからかい、ふざけた言葉だから菜乃花も楽しんではいるのだけれど。


「それはきっと菜乃限定だな」
「えーっ、ひどい」


不満を口にしつつ、本音ではまんざらでもない。
菜乃花以外に優しいのは素直に喜べなくても〝限定〟はうれしいから。
そんなささやかな部分に幸せを見出して、これまで生きてきたと言ってもいいかもしれない。


「ところで、菜乃にひとつ頼みがあるんだ」
「頼み?」


改まってなんだろうか。
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