S系敏腕弁護士は、偽装妻と熱情を交わし合う

「――あ、えっとその……署名した婚姻届だけで納得してもらえるの? 嘘が通用するのかな」


自分の気持ちが伝わらないよう必死に取り繕う。
朋久は菜乃花の目の奥をじっと見つめ、真意を探ろうとしているようだった。


「俺はいいけど、菜乃は平気なのか」


あまりにもあっさり了承されて肩透かしをくらう。


「私はその、……朋くんにお世話になってるから恩返しっていうか」


あくまでも気持ちはないとアピールする。朋久に重く捉えてほしくない。
姑息な手段だとわかっているが、二十年近く抱えた恋心が罪の意識を上回る。


「朋くんこそほんとにいいの? 書類上とはいっても私を妻にするんだよ?」


要は偽装のため、つい確認したくなる。


「俺は菜乃がいい」
「えぇっ!?」
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