あお
「もったいない、描きなよ!娯楽の何が悪い?それが仕事になることだってあるし、ならなくても、やりたいことはやんなきゃ人生損だよ!」

「損か…」

「そう。私はこの仕事やりたくてやってんだ。だからお金はいりませんって言いたいけど、現実はそうもいかないしね。ははっ」

「そうなんだ…。幸せだね、やりたい事ができて…」

「そうなの!すっごい幸せだよ。あとは優しい彼氏でもできたらね、幸せすぎて死んじゃうかもね、あはは。藤崎さんもやりたい事やったらいいよ」

「うん…」

やりたい事ねぇ………。

「ハイ、できあがり!あ~かわいい!これで街歩いたらナンパされまくって困っちゃうね、帰り気をつけて!」

「まさか!あーでも、すごく軽くなった。ありがとう」

軽くなったのは髪の毛だけではない。
過去のことも、彼女が綺麗にしてくれた。
もうこれで、彼女との過去を憎むこともないだろう。

「ただいまー…と」

依子ちゃんは勉強をしながら眠っていた。
依子ちゃんにそっと毛布をかけ、私は横でぼんやりとしていた。

< 10 / 100 >

この作品をシェア

pagetop