あお
「うしろ乗れ」

そう言って、健藏さんは私にヘルメットを渡した。

「これ…健藏さんの!?」

「ああ。これで昨日まで日本一周してたんだよ。2ヶ月くらいかかったかな?」

「すごい…、あ、だから学食行っても会えなかったんだ」

「え、会いに来てくれてたの?うれしいなぁ!」

「ち、違うよ!ご飯食べに行ってたんだよ!それも事務所に行くまでのことだよ!」

「なーんだ、さぁ乗って」

うそ…、本当は会いたかったから…。

「やっぱり行かない」

「え、なんで?」

「…彼女に悪い」

「彼女?そんなのいないよ」

「だって、…なんでヘルメット2個積んであるの?」

「それは‘いつか’のためだよ。いつかかわいい彼女乗せるために」

「…私彼女じゃないし」

「まぁいいじゃん!」

…お言葉に甘えて、私は健藏さんのうしろに乗った。
こんなのは、生まれてから初めてのことだ…。

「しっかりつかまえとけよ!飛ばすぞっ!」

「ひいぃぃぃ~!」

速くて恐かった。
でも風邪が気持ちよかった。

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