あお
位置
私は窓際の席に座った。
だんだん混雑してきて、みんな焦っているのを尻目に私は得をした気分だった。
……のに。

「すいません、隣りいいですか?」

「はい」

だめ、なんて言う権利ないし…。
顔は見なかったけど、男の人が横に座った。
しばらく無言で座っていたけど…

「…あれ?」

男が口を開いた。
チラッと顔を見たら…

「あ…」

「やっぱり舞子だ!」

昔、私をタダ働きさせた上に暴言を吐いた元社長だ。
一番会いたくない人間が、よりによって私の隣りに…。

「なんだ、すごい偶然だな」

…偶然?
昔再会した時も偶然とか言って、そうじゃなかったから…なんか信じられなかった。

「今何やってるの?」

「…またうちの親が何か言ってきたんですか?ご迷惑かけてどうもすみません!」

「違うよ、あれ以来何も連絡もないし…、今日は本当に偶然だ。信じてくれ」

「………」

「…親とは連絡とってるのか?」

「………」

「…とってないんだな。心配してると思うよ。とってやれよな」

どうしても信用できなかった。

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