グレーな彼女と僕のブルー
episode9.
月曜から三日間、教室に誠の姿はなかった。
怪我がどの程度なのか気になり、顧問の長谷川先生に尋ねると、傷は浅く軽症とのことだった。
傷害事件として逮捕された男は、競技の順番を待つ選手たちに紛れ込み、そこでナイフを振り回したらしく、誰かひとりを狙って刺すという犯行には及ばなかったと言う。
誠の傷も太もも付近を約六センチ切られ、縫合の必要はあれど、神経や筋肉に影響はなく、後遺症も残らないと聞いた。
ただ試合に臨む前だったので、精神的な苦痛や恐怖は言うまでもなく残っただろう。
誠の家を知らないため、お見舞いには行けなかったが、毎日ラインで取るに足らないやり取りは続けた。
誠がいない教室はどこか味気なく、捻挫のせいで部活にも行けず、今日も鬱々とした気持ちで昇降口をくぐった。
「……ハァ」
もう何度目かわからないため息が、空気中に溶けて消える。
僕の気持ちとは相反した青空が頭上いっぱいに広がっている。
医者の判断によると、今月末に捻挫も治るだろうし、それまでに誠も登校してくれるはずだ。先行きを重く考える必要はない。
帰るか。